「法定雇用率だけ」からの脱却—“設計”で実現する障がい者雇用の価値創出

株式会社マーキュリー
管理本部 パーソナリティ推進部 部長代理 児島様
コーポレートデザイン本部 ピープルマネジメント部 育成課主任 二瓶様
| 利用目的 | 法定雇用率達成に留まっていた障がい者雇用を見直し、生産性を伴いながら価値を生む体制を構築するために導入。 |
| 課題 | 自社で行っていた障がい者雇用は在宅中心の業務で売上に結びつかず、“雇用しているだけ”の状態に留まっていた。運用や関わり方の基準も定まっていなかった。 |
| 利用効果 | BPO業務の導入により、雇用と業務が連動し価値創出につながる体制を実現。Canvasの第三者支援も加わり、安定した運用体制を確立。 |
専門部署でのスタートと担当者の戸惑い
(児島様)
当社は、「社会と人をつなぎ『すべての人』の可能性を広げる」をミッションに掲げ、人材サービスを中心に全国で幅広く事業を展開しています。販売支援や営業支援、コールセンター運営などをはじめ、アウトソーシング、教育、エンターテインメント等の事業を展開する一方で、多様な人材が活躍できる環境づくりにも注力しています。
その取り組みの一つとして、障がい者雇用を本格的に推進するため2024年3月に設立されたのが、障がい者雇用を専門に担う「パーソナリティ推進部」という部署です。私自身は「パーソナリティ推進部」の立ち上げと同時に異動し、このタイミングで初めて障がい者雇用に携わることになりました。

これまで障がいのある方と接してきた経験もほとんどなく、正直なところ、最初は「どう関わればいいのか分からない」という状態からのスタートでした。言っていいこと・悪いこと、どこまで任せていいのか、どこまで配慮すべきなのか——。知識も経験もない中で、シンプルに「接し方が分からない」というのが一番の不安でした。ただ、実際に現場で向き合っていく中で気づいたのは、“接し方”以上に、そもそもの進め方や考え方に課題があったのではないかという点でした。
障がい者雇用は “特別な採用”ではない
(二瓶様)
障がい者雇用をスタートしてから現場として気づいたのは、障がい者雇用だから特別に難しいというよりも、「採用としてちゃんと設計できているかどうか」が大事だということです。例えば一般採用では、どんな人材を採用するのか、どんな業務を任せるのかを事前に整理するのが当たり前ですよね。ただ、障がい者雇用になると、その部分が曖昧なまま進んでしまうケースも多いのではないでしょうか?
(児島様)
確かに。ただの「採用」に「障がい」という要素が加わっただけで、急に戸惑ってしまうんですよね。見切り発車で始めてしまうとミスマッチが生まれるのは、一般雇用も障がい者雇用も同じです。事前に「どこまで求めるのか」「どんな環境で働いてもらうのか」をしっかり決めておくことが、結果的に障がい者雇用でも一番重要だと感じています。
“雇用しているだけ”からの転換
(児島様)
当社でも以前から障がい者雇用には取り組んでいたものの、会社としてどのような価値を生み出しているのかは見えづらい状態でした。在宅中心でデータ入力業務を行っていたのですが、売上に直結するものではなく、“雇用している状態を維持する”ことが目的になっていた側面もあったと思います。正直なところ当時は、「法定雇用率を満たせていれば十分」という考え方がベースにあり、まずは雇用人数を確保することに意識が向いていました。そのため、「誰に何を任せるのか」「どのように活躍してもらうのか」といった採用としての設計も十分にできておらず、「どう価値を出すか」という視点までは持てていなかったと感じています。
また、社内の理解も広がっておらず、実は私自身もパーソナリティ推進部に異動するまで、自社で障がい者雇用をしていることを知りませんでした。そうした状況の中で異動してきた際に、「このままだともったいない」と感じました。障がいのある社員一人ひとりが強みを発揮しながら活躍し、会社に貢献している実感が持てる環境をつくりたい。そのためには、単に雇用するだけでなく、業務の設計や関わり方そのものを見直し、それぞれの力を活かせる仕組みづくりが必要だと考えました。
ちょうどそのタイミングでパレットのサービスと出会い、これまで“雇用”と“仕事”が切り離されていた状態から、業務として価値を生み出せる形にできるのではないかと感じました。
CanvasではBPO業務として対価を得られる仕組みがあり、雇用・業務・価値創出を結びつけられる点が大きな判断材料になりました。
「特別扱いしない」関わりと、現場での試行錯誤
(児島様)
私がパーソナリティ推進部に来てから大事にしているのは、「障がいがあるからといって特別扱いはしない」というスタンスです。合理的配慮は必要ですが、それは障がいのある方だけでなく、誰にとっても必要なものだと考えています。だからこそ、「優しくしすぎる」のではなく、社会人として必要な水準はきちんと求めるという意識で向き合っています。
しかし、実際の現場では思うようにいかない場面も多くありました。例えばスキャン業務を広げようとした際も、「スキャンセンターの雰囲気が苦手」「なんとなく嫌なイメージがある」といった理由で業務に入ることをためらうケースもあり、“業務を任せたい側”と“不安を感じる側”のギャップは想像以上に大きいものでした。
(二瓶様)
たしかに最初は、「大変そう」「きつそう」というイメージだけが先行してしまい、避ける雰囲気が生まれていた時期もありました。「とりあえずやってみる」ということ自体のハードルが思っていた以上に高かったと感じています。
(児島様)
ただ、実際に経験してみることで印象が変わるケースも多く、今では「むしろスキャンセンターで働いていたい」と話すメンバーも出てきました。実際に経験してみることでしか見えてこないことがある、というのは想像以上に大きな気づきでした。
また、日々のコミュニケーションも試行錯誤の連続です。「分からなかったら質問してね」という一言でも、相手にとってはプレッシャーになることがあります。
(二瓶様)
コミュニケーションについては、私も日々試行錯誤しています。言葉の選び方や伝え方については、相手にとって理解しやすい形になるよう意識していますね。また、体調やコンディションの変化にも配慮しながら、“これ以上悪化させない”という観点も含めて、無理をさせすぎないことや、その時々の状況に応じて関わることを大切にしています。
(児島様)
そうした試行錯誤の中で、一人ひとりが本来持っている強みを活かしきれていない場面に直面し、「もったいない」と感じる場面も多くありました。だからこそ、この環境をゴールにするのではなく、「社会人としてのスタート地点にしてほしい」という思いで日々向き合っています。
第三者の介在で生まれるバランス

(児島様)
障がい者雇用を進める中で強く感じているのは、「会社と本人だけでは解決できない場面が必ずある」ということです。そのようなときに、第三者として伴走してくれるCanvasの存在は非常に大きいと感じています。面談でも第三者が入ることで、会社側が伝えづらい内容や本人が受け取りづらい内容を整理して伝えてもらえるため、会社と本人の双方が安心してコミュニケーションをとる上でも助かっています。
また、“安心して率直に悩みを話せる場所がある”こと自体が、働きやすさにつながっていると思います。
(二瓶様)
第三者の立場からフォローしていただけることで、私たちだけでは拾いきれない変化や悩みにも対応しやすくなっています。安心して働いてもらうための体制づくりにおいて、とても心強い存在ですね。
これからの障がい者雇用のあり方
(児島様)
今後は、業務の幅をさらに広げながら、生産性も高めていきたいと考えています。現状でもまだ課題は多く、例えば業務量に波が出てしまうことがあり、「会社や社会に貢献できている実感」をどう持ってもらうかなど、整理しきれていない部分もあります。現在も社内で試行錯誤を重ねながら、どのようにすればやりがいと生産性を両立できるのか、継続的に検討している段階です。
そして担当者として取り組んでみて改めて感じるのは、障がい者雇用は想像していたほど特別なものではなく、一人ひとりと向き合う中で見えてくるものが多いということです。
(二瓶様)
私自身も、障がい者雇用だから特別にスキルが必要だと感じることはあまりありません。事前に役割や期待値を整理しておけば、通常の採用と同じように進めていけるものだと思っています。
(児島様)
そうですね。だからこそ、受け入れ前の準備が大切だと感じています。
(二瓶様)
そうすれば、障がい者雇用も決して難しいことではないですね。
企業情報
| 社名 | 株式会社マーキュリー |
| 事業内容 | 人材サービス事業 販売支援・営業支援事業 コールセンター運営事業 |
| URL | https://mercury-group.co.jp/ |